僕が笑顔でいることは多く、近所でウェールズの友人がいつかいった「変な子」扱いされてもやはり変わらず笑顔でいた。
とりあえず笑っておけば、なんとなく許されるような気がしていたし、実際この容姿で得をすることの方が多かった。昔から。
姉のミーガンがガミガミ言おうともまた変な本読んで!とどなられようともさして気にせずぬるぬるうなぎとしてするりと攻撃もかわした。
あちらの世界をいつ開いたのか、といえばかなり偶然だった。
幼少から既に妙な力があって、足元の本が邪魔だなあと思えばふわりと浮いて本は元の位置へと納まったし、いたずらしてやろうと指を一閃すれば犬の尻尾は鉄のスプリングみたいに渦巻いた。
「なんでみんなこんな簡単なことができないんだろう?」
幼いハウエルはうーんと考え込んでいて、悩んだ挙句両親に訊ねてみたことがあったが奇妙な現象も目にしたことがなかったせいもあるだろうが何を戯言を、と取り合おうともせず、ミーガンなど言わずもがなであろう。
年齢と共に魔力が強くなる、なんてことは証明されている訳でもないし、生まれついた時から魔力の一定量など決定している。
ただどのような効果的な魔法を使えるかとか、もっと複雑な魔法をとか、力をどれくらい御して上手く使えるかとか、後年上達できることはそれくらいだ。
ハウエルの場合は例外だったのか、両親に尋ねる8歳になるまでは大した魔法も使えなかったのだが年々増加していく魔力が明確に発言したのは運の悪いことにその頃だった。
だから両親も気に求めなかったのだ。
例えば赤ん坊がミルクがぬるいと駄々こねて沸騰させてしまったり、ガラガラが煩いと壊してでもしてしまえばさすがに気付きもしたのだろうが、ハウエルの場合は特殊なケースなのだ。おしゃぶりを銜えている頃はまだ魔力はせいぜいスプーンを1cm動かすくらいの微々たるものだった。
そんなある日、ハウエルが能力をなんとか解明しようとユリゲラーとか妙な方向性の書物へと突っ走ろうとしていたある日のこと。
軒先の本屋でそっち系の書物を目を皿にしてあくせくしていた時だった。
「そんな強大な力を宿して、どうしようというのです」
「……誰?」
50代半ばほどの淑女が8歳のハウルの背後に顔をにょっと突き出して可笑しそうに笑っているのを認めて、彼は困惑した。
「あなたは危険だわ。ハウエル・ジェンキンス。神様から折角授かった宝物を無為にして誤った方向へ用いようとしている」





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