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―――――大戦終了、半年後 オーブ某所・孤児院


僕達はただただ傍にいてたまに目が合えばラクスと微笑みを交差させ、オーブから回される開発依頼や発展型プログラム製作など技術要員として働くことに不満は不思議と生まれなかった。
続いていた穏やかな日々は、しかし波立たぬからこそそれは似非じみたものであったのだ。
自覚を来していたが、キラもラクスも互いの暗黙のルールとして口にすることは無かったし、行動を起すこともなかった。
「ラクス…」
「はい?」
「しあわせ?」
「……はい。とても」
ラクスを失った母のように慕う子供たちが嬉しそうに彼女の腰に抱きついたり腕にまとわりついたりと悪戯を働いている。なだめるように白い手を頭において、「めーですよ」と諭せば、子供たちはそれすら待ってましたとばかりに更なる無邪気さで迎合する。
キラはすっかり日常と化した光景を見つめながら、彼女があまりに好きで栽培まで始めてしまったミントを使用した紅茶を喉に下しながら、溶けた砂糖に混ざりきらなかった仄かな渋みに、舌を収縮させた。
「しあわせ、か…」
呟きは湯気と少女等の歓声にかき消され、キラの微笑は悲哀に翳っていた。
自答を繰り返す。

本当に僕は、しあわせなのか?




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