1.take me fly(原作・ハウソフィ) 「あんたはどこにも行かないよね」 「…なーに突然?」 「女ほど僕にとってつかめないものはないからさ」 「あなたって、どれくらい過去女の人がいたの?」 「え」 「ねえ」 「忘れたね!はっはっは!」 「わざとらしい…まあいいけど」 僕には手元から飛び立った女性が多すぎるから、あんたもその一羽になりやしないかと不安なんだよ。 2.なんでもかんでも(学生ハウルととある友人) 煙草の紫煙がくゆらせながら、女生徒からも騒がれ、尚且つ性質の悪いことに当人も手癖の悪い友人と並んで座った。 「お前さー、実はなんでもかんでも死ねとか思ってねえ?」 だから先輩にもあんな遠まわしな喧嘩ふっかけて女もこっぴどい振り方するんじゃないのか。何もかも恐れていないような横柄な態度。 「んー?」 「…てハウエル、何分厚い本読んでんの?」 「2つの世界を行き来する僕が学ぶことは多いのさ」 「はあ?んなこといってんから近所で美形なのに変わった子扱いされんだよ。おい金物だからってしおり噛むな」 金属のしおりを唇に銜えてぷらぷらさせて「んー」と聞く気もなさそうな返事を横されて、むくれて憮然とあぐらを組みなおした。ラグビーボールをぽんと空高く投げると手元に落とすはずが微妙にずれて 「お!」 熱心に読めない字を読み込んでいるハウエルの頭上へと真っ直ぐに落下していく。 「おちるぞ!」 「知ってる」 ほい、といつのまにかキャッチしたのかラグビーボールが片手間に屑でも捨てるように寄越される。 「僕はなんでもかんでも死ねとかは思ってないけど、なんにも怖いもんもないよ」 ハウルは嘲笑って、「まあでも」と続ける。 「女も好きだしセックスすんのも好きだけど、心底本気になったことはないから、死ねまでいかなくてもたまに思うよ」 「バカ女とか?」 「さあ。ご想像に任せるよ」 やっぱ思ってんじゃなかろうかこの憎たらしい友人は。 3.ファースト。(原作・ハウソフィ) 「一番初めってなんにつけても思い出に残るもんだよね」 「まあ、そうかもね」 「ソフィーの初めては誰?」 「……なにそれ、あんたは私に殴られたいの?下品すぎるわ!」 「違うってそういう意味じゃなくて!」 「じゃあ何?」 「だーから…、キスだよ」 「はあ?…………えーと、そんなこと聞いてどうするの」 「別に。いいから誰?」 「じゃああんたは誰?」 「………………………………えーと」 「そういうことよ」 「まさか君もなの!?」 「…今なんだか私、とってもあんたと意見が食い違ってるって気がしてきたわ…」 4.別世界でよかったよ(原作・ハウソフィ) 「あら?ハウル、この箱はなあに?」 「え?なんだいそれ」 「あんたが昨日ウェールズから酔っ払って帰ってきたとき『友人にもらった手土産だー』って言ってた袋から生ものだったらいけないと思って出してみたんだけど、読めないのよね」 「どれどれ…………こ、れは!」 「なあに?」 「い、いや!あっちの製品でね。画像を保存しておくためのものなのさ。これはミーガンの家に置いてくればよかった。我が家には別に必要もないものだ。彼女の方が喜びそうだからあげてくるよ」 「あの義姉さんが喜ぶものなんてよほど珍しいものなんでしょうね〜」 ともう興味をなくしたように掃除へと戻っていく妻の背中を見送って、ハウルは張り付いていた笑みを引っぺがすと顔一面に嫌な汗がどっと滲んでいた。 「はあ、はあ、なんてことをしてくれるんだあいつらは!」 僕は昔じゃないんだからもうこんなもんいらないし元々いらないっていってるのに!! でかでかと綴られた文字、『美人妻』というパッケージビデオを手に、汗を拭う。僕とソフィーが別世界生まれで本当によかった。でなきゃ殺されていた。 5.にがい。(映画・ハウソフィ) 「んっ、ちょ。ハウル…」 「なーに?ていうかこんな半端なとこで止めないでよ。嫌がらせ?」 「あのね。苦いの」 「苦い…?僕のキスが?」 いつでも甘さたっぷりだろうと言ってのけたハウルが、はたとある記憶の一点にたまたま焦点が当って、そういえば…と呟いた。 ほら思い当たる節があるじゃない、とソフィー。 「たばこーって、ソフィー嫌いだっけ」 「だめよ。水煙草もだめ。全般ダメ」 「キス自体は?」 「…………言わせる気?」 「言わせる気」 6.瞳について一言。(原作・ハウソフィ) 「ガラス玉みたい」 「ん?何が」 「契約破ったからガラス玉が普通の目っぽくなったかしらと少し思ったけれど」 「ああ、よく言われたよ。『あなたの瞳は神秘的な輝きね』って。しかし宝石くらいがいいなあどうせなら」 「あら。どっちも素敵じゃないの」 「…なーんか心持ち安っぽい」 「あんたは色々得しすぎてるから、ちょっとはいいじゃないの」 あんたを今、からかえる女はあたしだけだと知らしめたいのよ。 7.過去のあんなことこんなこと(原作・マイケルとハウル) 「マイケルは女性はちゃんと好きなのかい?あんまり話を聞かないから心配になってくるよ」 「大丈夫ですよ!…でも僕はマーサ一筋ですから」(ハウルさんとは違って) 「僕は女性みんなを愛しているのさ」 「…今日はどなたの所へおでかけですか?」 「ライラの所さ。あともう少しで僕のものになりそうだ!」 「………そうですか」(可哀想に…) 「まあ、もう少し骨があった方が楽しかったんだろうけど」 「ハウルさん。もう包丁振り回した娘さんに追いかけられるのはごめんですよ」 「その心配はないさ!彼女はとても儚げな美女だからね!」 (いえ前回のその包丁振り回してやってきた女性も十分儚げだったんですが…) おわり。 |