有給休暇をいただけませんか。 貴方は私に自宅でまで過重労働を強いるから。 私の意志を容易く弄んで、私の理性をも剥ぎ取って。 「What's?」 「君を鑑定してやろう」 「いりません」 どこから持ち出したのか、天眼鏡らしきものを握ってじりじりと迫り来る男の頬を、リザは重ねた両手で思いっきり跳ね除ける。 ベッドの上でなんたる不謹慎な。いやする行為自体がもはや不謹慎か。 何もかもにも無関心を装うロイだが、一つ凝りだせば物の真髄にまでさし迫ろうとするのだ。 世界最強の厄介ではた迷惑な凝り性だとリザは思う。 「どこだ、どこがいい?」 「何言ってるんですか」 そわそわと怪しげに這い出す無骨な腕を、冷淡に枕もとへと放り投げた。 これには少しばかり傷ついたらしく、彼の漆黒の瞳が空ろにしばたかれる。 彼女が好きな黒目がちな瞳が塞がれてしまうのは残念だが、口はいい加減につぐんでほしい。 そこで引き下がりでもするような男ならば、私は彼の傍になど同情でもいてはやらない。 珍しく立ち直りの緩慢なロイが気に触りながらも、それ尚動じる態度を見せないリザ。 「・・・・たまには思い通りになってくれないのか?」 打ち捨てられた子犬が差し伸べられた気まぐれな手に身を摺り寄せるように、ロイはリザの細い肩に腕を回した。 「やめてください」 この瞬間、あの瞬間、今の瞬間。 甘い甘い私だけの貴方。 あと一秒だけは私のもの。だから誰も触らないで。 「それが煽るんだ」 「嘘」 「嘘じゃない」 「嘘です」 そう。嘘だ。 嘘でなければならない。そうでなければ困るのだ。 だから彼は私のものではない。 リザは勘違いしそうになる、そうしたくなる自分がいることを今この瞬間にも徹底的に思い知らされていて、悔しくて優しくて痛々しくて泣きたくなる。 その感情は、どうしようもなく、衝動的に刹那的に。 ロイは目を少年のように煌かせる反面、口元には妖艶な微笑。 この類の笑顔は良い目に遭わされた記憶がまるでないので好きではないが、彼の笑顔自体は嫌いじゃない。 「私にはその言葉すらも媚薬にしか思えないがね」 「違います。・・・毒薬です」 だから私は我に戻る。 一瞬は『ほんの一時』で終わらなくては意味に沿わない。 そう。 いつだって気が付いてみれば、貴方の低い声音が削り取られた睡眠時間を支配する。 火照りだす熱さに火傷する。 天国にいながら、火あぶりの刑に処せられる感覚を私が味わっているのはなぜでしょうか。 「じゃあ含ませてくれ。君の毒を」 「・・・物好きな」 今の給料では私の良心ぶりにはまるで割に合いません。 いっそ残業代つけて返してください。 大佐。 fin. ---- 読んでいただけていればすぐ知れるとは思いますが、とある東京TV系列の番組見ながら書いてました。 ロイの一文で分かりますね。はいはいバレバレだからね私。 日記短文てな項目を設けてみたりしてたわけですが、どうにも縦に伸びて見難いのでごちゃまぜにします。 ということで、日記に載せてました(載せてます)。これは結構な加筆版です。 異様に短いのは日記にあったから。 ・・・すみませんどうやら私の書く大佐はとことん堕落したいらしいです。 ていうか公約破っててあらどうしよう私なんですが。 「彩」白紙状態続行中。・・・だってあれ時間かかるんだもん!!(何を言おうが言い訳です) |