命と命が手を繋ぐ。
血で血を洗う貴方と私。

ただそれだけのこと、ただそれだけのこと。





「real」






「さあ、いよいよ事態は窮したようだぞ」
「どうしますか」
建物や肉が焼ける焦げ臭さが立ち込める中、階級上一見上司部下でありながら、
実のところ裏でまことしやかに蜜を編むロイ・マスタングとリザ・ホークアイは、
ぐるりと一周敵陣の只中にありながらじりじりと後じさりし――――――――
いや、間合いを計るために背中を付き合わせた。
いかに殺伐にでも一応は睦言を交し合う男女が一転、数十時間後には不釣合いな戦場で互いの命を擁護しあっているというのも、なんとも可笑しな話だ、とロイは喉奥で笑った。


「不謹慎ですよ」
「性質なもんでね」
リザは叱咤したが、ロイは気にも留めず次第に集団戦法か瓦礫を巧みに移動し、
陣形を整えつつあるテロリストどもを睥睨する。
石畳から土の露出した地面を蹴る彼の軍靴が乾いた土をかき鳴らし、
大粒の石ころ足元で小さく蹴られバウンドする。
ロイは毎度決まって部下達に言い放ち激を飛ばす言葉を口にする。
人数が大なり小なりロイが部下達に言うことは同じであり、価値もまた等しい。


「さあ、遺言は言付けてきたか?」
「随分前に」
「君は女性だから、女を泣かせるなよとは言わないでいいのが、まだ救いだな。女性は泣かせる奴など生きる価値もない」

敵陣の一切の動きが止まる。
ロイとリザは、低く腰を落とし、リザは銃を構え、
ロイはギチギチと鳴らし発火布から火花を散らす。



「では、大佐は無価値ですね」
「泣かせ上手だな。君は」



同時、空気が弾ける。

四方八方から踊り出た人影が一直線に二人に飛び掛った。
素早い身動きに風が切れ、奇妙な音を奏でて、血生臭い数多の命による協奏が始まった。
二人の頭上に振り下ろされた第一陣のナイフは、しかし肉を割ることはなく、
リザの放つ閃く弾光に頭から血しぶきを上げた。

火を噴いた発火布が死へとあまねく巨大な鉄槌となり、弧を描く炎が通過し、後尾引いた残痕には、炭と化した黒い数体の骸が地上へと崩れ落ちる。
美しさすら感じせる幾筋もの煙が、風に惹きつけられるように辺りを流れた。
一瞬で人を無に帰す渦を巻く烈火への恐怖に、訳の分からない叫び声を上げて襲いくる宙の第二撃へと獰猛な赤の獣は的確に喉笛へ食らいつく。
餌食となった餌は空中へ散撃した格好のまま、どさりと音をたて地面へと墜落する。
一帯に黒い煙が救いを求めるのろしのように天へと舞い昇っていく。


「まだ私と彼女は、黄泉へと赴いてやるわけにはいかないのでね!」
「同感です!」
ロイは正義の確信を胸に、女を陥落させる穏やかな微笑で誰ともなく宣言すると、
再び死を量産する炎の腕を奮い、また数人をまとめて焼き払った。





fin.



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とにかくアクションを書きたかったらしい一品。
どうにもこうにもやり切れてないのがミエミエでイタい。