態度は信用できない。 君の強固な瞳は信頼できない。 ならば言葉で。 人が人に伝えようと生まれた言語で。伝えろ。 そうでなければ、哀しすぎるだろう? 伝える術を持ちながらも気持ちを、思いを伝えられないなど、辛すぎるだろう? そうは思わないか。 たった一人、私が愛しいと感じる貴方よ君よ。 「luvlink」 「君は愛しているとは言わないな」 ロイは逃げを打とうとするリザの腕を掴み上げ、剣のある瞳で彼女に凄んだ。 睨みすえる相手を発火布から舞い上がる炎ですべてを食らい尽くすこの男に閃く眼光は、 屈強な男すらも震え上がらせる。 リザは瞬間あまりに獰猛な殺意に息を呑んだ。 どうして貴方はそんなに私に固執するんでしょうか。 抱くだけの相手、朝を迎えるだけの相手ならば事欠かないだろうに。 「どうしてだ?」 違う、聞きたいのは私だ。 よりにもよって、どうして私を? ロイは批難がましく睨んでくるリザに柔らかな笑みを顔一杯に向け、耳元で囁く。 彼女にのみ向けられる低く、甘い声はリザの神経という神経の琴線を震わせた。 確実に理性を剥ぎ取っていく調べに、リザは頬を赤くする。 彼こそ、愛しているとは決して口にはしない。 その貴方に私は愛していると言わなければならないのか。 途方もない、巨大な矛盾に息が詰まる。 そしてそれを正当化しようとする貴方は、なんて身勝手で傲慢。 「言って、ほしいんですか・・」 「ああ。君の口から。寝るくらいなら思いがなくともできる。 好きでなくても、嫌いであっても、そうでなくとも。出世の道具にだって使われるものだからな」 「どうして私なんですか」 「どうしてだろう・・不満か?」 あまりの至近に真正面から視線を受け止めることが出来ず、たまらずリザは下唇を噛みながら瞳をそらす。 やけにロイが吐く息も熱っぽい。 彼はやがて耳元からリザの頬を舌で滑らせ、首筋へとたどり着く。 身震いするほどの思いをもてあましながら、リザはそれ尚逃げ出そうとロイの胸を押し返すも、 非力な手は頭上の壁へと押し付けられる。 手首に彼の爪がくいこみ、与えられる僅かな痛みにリザは顔をしかめた。 どうしてここまで私を追い詰めて、貴方は貴方はどうして私を。 「・・・・中尉、愛していると言ってくれ」 ロイの漆黒の瞳が初めて揺れた。 それは強制力とはうって変わり、哀願のようにも聞こえたので。 私は貴方を好きだけれども、抱かれている時、とても幸福に満たされ、 この瞬間にならば死すらも許そうと思うのだけれども。 貴方は果たしてそうなのでしょうか。 荒い息に、揺れる視界の中で滲んでいく貴方をいつもいつでも思慕しながら、 私はその言葉だけはいつでも言えずにいるのは、貴方はなぜだと思っているのでしょうか? 甘やかに私だけに捧げられる愛の言葉を満面の笑みで受け取って結局いつも逃げ出してしまう私は、 貴方に愛されているという自信がない。 時折たまらなくなる時が、瞬間がふいにあるから訪れるから。 「中尉」 「・・・言えないんです」 だから私は貴方に愛しているとは言えない。 切り札丸ごと、捧げられる愛情を手放してしまいそうで、それがたまらなく私を恐れさせるから。 喪失に似た苦さを私に知らしめるから。 だから言えない。 fin. ------ 冒頭部分はリザとロイの二人の言い分です。 分かってるんだけど、言えないなんて辛いとか言い訳してますが、結局はリザがラストで言ってる とおりです。そんだけなんです結局は。ややこしさの中でしか生きられない二人でした。 次は大佐、と行きたいんですが、ひねくれ男を書くと気弱になるので、鬼畜まで書いてみたいなー。 攻め攻め、これ以上はないくらい愛情の押し売り、みたいな。 まあ二人が好きあってれば、私は満足なんですが。へへ。 |