ガンガン2月号モロネタバレにつき要注意!




































居心地が悪い。悪すぎる。
牢獄に繋がれ精神攻撃でもかけているようだ。
リザは嘆息する。

そう、これは移動という名を借りた―――まるで拷問。


とても車内になど目を向ける余裕もなく、とにかくひたすら窓の外に視線をやることを努める彼女は、緊迫の空気に当てられて膝上の手を握り締めてしまう。
肌を刺すような冷気がハンドルを握る上官から惜しげもなく感じ取れるのも、かなりの確率で正しいとと言えるだろう。


なぜ、どうして私がこんな目に。

うるさい車のエンジン音も、今は天のお情けに考えられてしまうのはほどほど自分勝手な人間の神秘だと言えるのではないか。
訳の分からぬことを考えながら、リザはちらりと緊張の面持ちでロイを窺うも、一向に良くなる気配すらなく、むしろ更に妙な気迫が倍増している。

横窓によりかかって溜息をつけば、ガラスが白く曇っていく。
陰鬱な表情でリザは半ば自棄気味に目を伏せる。

ああ、一体私が何をした。






「 from jealousy 」





ロイは夜分にこうして街を走るのは、そう悪い気はしない。
何せごくごく珍しいことにリザが助手席に乗っているともなれば、軍属の身分にある由縁でいつ狙われるともしれないものの、気分はやはりいいものだ。
・・・・・普通ならば。
そう、あくまでも仮定上での話だ、これは。


「いい加減、機嫌を直されてはいかがですか」
リザが窓側を向いたまま、静まり返った車内で沈黙からちょうど10分後、ぽつりと第一声を漏らした。
「なんのことだね」
素知らぬ振りをしてみるが、振りが成功しているのは言葉のみできっと表情は険を帯びたままだろうな、とロイは自嘲する。

「大佐の今の表情こそが、機嫌が悪いと物語っているように思われますが」
「はっはっは。なぜ私が機嫌を損ねなければならないんだ!」
笑いにも覇気がなく文字通りの棒読みである。
「・・・・あれは不可抗力です絶対に」
というか、勘違いしてほしいなどとは微塵も思わない。
むしろしてほしくない。

リザは静かに、しかしながら語尾強く断言すると、対応してロイの目元がピクリと動いた。
やはりまだ怒っているではないかとリザは分かりやすい上官に嘆息する。

「分かっているさ、君はそんな人間ではないしどう見ても嫌がっていた」
「おっしゃるとおりです。お分かりでないですか」
ロイは急に道路脇に車を止めた。これには少しリザも目を見開く。
彼はハンドルを握りこんだまま、大きく胸をそらした。
「だが!!」
「ですが?」
「私が気に入らないんだ!!」


・・・・子供かこの男は。

さすがのリザも唖然とした後、呆れ返ってだだっ子の顔を見遣れば彼の視線と鉢合わせた。
ロイは一応自覚あっての気恥ずかしさなのか、若干頬が赤く染まっている。
あって当然だ。29歳にもなってなければそれはそれで大問題だと思う。
リザを直視できぬまま、ロイは落ち着きなく喉の調子を整える。
「・・・たしか、バリー・ザ・チョッパーは男だろう」
「しかし今は鎧です。性別はさほど・・」

言い終わらない前にロイは声を荒げた。
「抱きつかれていたのは君だろう!どうしてそんな平然としていられるんだ!!」
リザが淡々と言いつくろう。
「しかし鎧に魂が定着されると感覚の一切がなくなるそうですので、別に体に触ろうともあちら側には何の感触もありません」
「だが・・・・ねに触れていた」

あまりの小声に始め辺りが判然としない。
彼女は再度言葉を促した。
「すみません、聞き取りにくいのでもう一度お願いします」
「だから!胸に触れていたといっているんだ!!」

ムネ?
胸。
目線を自分の胸元に目を移すと、ロイからの視線も感じ、リザは即座に顔をひきつらせて一気に縮こまった男を睨みつけた。
「何見てるんですか!」
「見ていない!」
怒りに声を押し殺すリザにロイが冷や汗をかきつつ弁解する。
のらりくらりと目を泳がせるロイの追求を諦めてリザは気を取り直し、先ほどの彼の糾弾に答えることにした。

「・・・触れていたんですか。ですが、だからなんです?」
「嫌ではないのか」
「ですから感触は」
「そういう問題じゃない。・・・嫌ではなかったんだな」
嫌悪するもしないも、リザは押しのけるのとロイに報告したいとはやる気持ちに手一杯で、それ以前に気がつかなかったのだ。


「それは、知らなかったんです」
「本当かね?」
「嘘を言っても私には何の利益にもなりません」
66の味方など自分が相手に気に入られていようが構わず、する気もなければ由縁もない。

ロイはじっとリザを凝視し、リザは売られた喧嘩は買わねば恥、とばかりに真っ直ぐに彼の瞳を見返す。
緊迫の中、見合いあう大佐と中尉。
しばらくすると、ロイは彼女の本心を見極めたのかしたのか、先ほどとは打って変わりゆったりと胸を撫で下ろした。

「ならばやはり触れられるのは私だけか!」
「セクハラで訴えますよ」
俊敏にリザは彼の肩にかけているホルダー内の銃に手を忍ばせ、安全装置のロックを外してみせる。


「・・・・・・・・」
急激に吹き出てくる冷や汗。
東方司令部最強の女を前に、ロイは無言のまま両手を挙げた。






fin.



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萌え突っ走りで書いた短文です。
いや〜66と部下置き去りにした後の軍部に着くまでの二人が気になって気になって!
明日は出かけるのでUPするなら今日しかねえ!とスパートかけてラストまで爆走しました。
愛だけなので相当空回ってると思われますが、生暖かい瞳で見てやってください。
つか萌えましょう!一緒に!!
66、リザの胸微妙に触ってたよね!?
アンダーバスト辺りって、なんでこんなところなんだ66。狙ったんかい!と突っ込んでしまいました。
もう見所がオヤジっぽいよね・・・・でも好きなんだからしゃーねーよな。


そういえば荒川先生のイラスト集がでるそうですよ!予約しなければ!!


from jealousy = 嫉妬の余り。
なんだかピッタリじゃない?(笑)