それは目にちらちらと入ってくる映像。 沸き立つ鼓動はまぎれもない現実。 綺麗にたゆるラインは美しく。 白すぎる肌は柔らかく。 毒づく毒づき毒づく日々。 「気付いた時」 手馴染んだ様子で、か細い手には不釣合いな工具を持ち替え取替え、機械鎧の整備を片付けていく。 御馴染みの黒のボトム姿で、ウィンリィは毎度御馴染みの台詞とほんの僅かな心配りを込めて忠言した。 「アンタ、もうちょっと丁寧に扱えないわけ?」 「仕方ねェだろうか!オレだって、別に好きで雑にしてる訳じゃねえんだから」 「はい、嘘つきは泥棒のハジマリー」 「・・・はぁ!?なんでオレが泥棒なんだよ」 エドワードの、元よりつり気味な目元がさらに鋭度を増す。 「だって」 金髪の背の低い少年限定・懲らしめようスパナをあわよくば、とひっそりと片手間に用意する。 使用頻度が高いのがチャームポイントだ。 「メンテナンスしないし」 「う」 「なんだかよく壊してくるし」 「な」 「オイルくらいさしなさいよ。動きが悪くなるでしょ」 目線をうろうろと彷徨わせるエド。 ウィンリイは半眼になりつつ作業を続ける。 接合部。 神経接続、異常なし。 ボルトの緩みはないか確認する。 異常なし。 腰を屈ませ、彼女はエドの腕を上げるよう顎をしゃくると、不承不承力が入れられ、少し空に浮いた。 まだメンテナンス中ということもあり、過剰な力はかけないようにと口酸っぱく言った警告は聞いていたらしい。 気まずそうに押し黙るエド。 さあ、返答くらいしなさい。 「なぁ」 「何?謝罪?」 「いや」 「何よ」 上から降ってくる言葉にのみ耳だけは傾け、一切の神経は機械鎧へと向かう。 整備はきちんとしなければ大事に繋がる。 彼の場合は特別色々乱暴に扱わなければならない理由があるそうだから。 「お前、何か着ろよ」 「え?だって作業してると暑いんだもん」 屈むこと、加えて腕を浮かせて忙しなく動かす相乗効果で、ウィンリィの鎖骨のラインはくっきりと浮き出ている。 雨でも降ればきっと水溜りができてしまうだろう。 いや、いっそ降らせるか? 「お前さ、無防備なんだよ」 「何よ。家の鍵ならちゃんと閉めてるわよ?」 「そこが無防備なんだよ」 アルはばっちゃんのところでメンテナンスを受けている。 この部屋にはお前とオレだけ。 目撃者はそろそろ南上を迎える太陽の日差しのみ。 真っ白な肌が陽光に透ける。 照らされた顔に長い睫毛が翳る。 見ているだけで抑揚させる首筋。 折れそうな肩。 肌滑りの良さそうなうなじ。 「・・・無防備なんだよ」 「何が」とこれっぽっちの危機感も持たずに返答する変わらず純粋なお前を痛烈に畏れる。 甘美なあの瞬間、その瞬間。 今最も苦々しいこの瞬間。 「・・・クソ」 力が入り、機械鎧が痛みに軋む。 口内で噛み殺した苦虫の名はイクジなし。 fin. ---------- さわやかなエドウィンとは正反対な第一作目。 健康な男の子だったのねというエド。あの格好って結構キワドかったりしません? 整備の時なんか私だったらドキドキしますが! 二作目はかなり近日に更新予定ですのでヨロシケレバ。 |