[ I need you ]





「ねえ、あたしが必要?」
「あ?」
ウィンリィが突然可笑しなことを言い出したので、買い物に連れ立ってこられるなり振り回されっぱなしで少々憮然として突っ立っていたエドも、いよいよカッコつけていられなくなり、ついでに珍しく背を伸ばそうと無謀にも挑戦しかけていた牛乳ビンに伸ばす手もぴたりと部屋の冷気に冷やされるままである。
鋼の手が一層冷たく、氷ようだったが神経が通わぬ残された腕に低温が伝達されるにはまだ数分を要するだろう。

「ねえ、あたしが必要?」
「・・なに言い出すんだよ」
「機械鎧もあるし、そうだよね、きっと」
「何言ってんだ」
憮然とするエド。判然としない態度には苛立ちさえ覚える。
「ううん。ただあたしってなんだろうなって思って」

「お前にとって?」
「・・・・アンタにとって」
「じゃあ聞くけど、お前はなんであってほしいんだ?」
うろうろと彷徨うエドの手先の牛乳ビンをがしっとウィンリィは鷲掴み、店のレジへと歩いていく。
エドものこのことブーツを響かせ、なにやら考え込むように背中を丸める。
「じゃあ聞くけど、アンタはあたしになんであってほしい?」
息が詰まるエド。
精算を終えた牛乳ビンを少しばかり離れた位置に佇んでいたエドに弧を描かせ放り投げれば、ビンは割れ物、慌てて生身の腕で受け止めた。

「乱暴女!」
「で、どうなの」
腕組んで見下ろすよう眼前に立つウィンリィ。
「・・・・・・バカ女め」
「バカ男め」



冷や汗は十秒後、息が温まるのも十秒後。
それは口元で初め言葉にされ、念押すように耳元で囁かれる。


「・・・・I need you.」

君が必要です。
機械鎧にとっても俺の精神的安定においても。
お前はどうなんだと聞き返すほど野暮ではないはずなのですが、
こうして今君に頬をひっぱられているのは、どういうことなのでしょう。






fin.



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BBSで短時間公開していたものです。
人に必要とされたいのは当然ですが、好きな人になら尚更だと思うのです。
アニメでウィンリィ、バリバリヒロインですね。
ガンガンでも出てるし・・・!ウワーイ!エドウィン!