「どこかの」






「どこかの異国の風習ではね・・」
「あー、ああ」
今日は、と明るい声で続けるウィンリィを尻目にエドは頬付けつきながら生くら返事を繰り返しつつ、どこからともなくやってきた子猫と鋼の手を戯れさせつつ、くわあとあくびを噛み殺した。
腹が減ったなと思う。
ウィンリィの手料理は意外となかなかいけるもので、ピナコの味かと思いきやそうでもなく、一人呟いたばあちゃんの独白というか独り言によると、「娘の味」なんだそうだ。
イシュヴァールに巻き込まれ他界したコイツの母親。
エドはぐるぐるとじゃれついてくる子猫のパンチをかわしながら、記憶に思いを飛ばす。

「優しそうな人だったよな」
「そう!きっとオリヒメっていう人は優しいのよ!」
「あ?」
「なんだ、アンタたまには女心は分かるんじゃない!」
バシバシと肩を叩かれて咳き込みながらも、さっぱり事情がつかめないエドと上機嫌で何やらオリヒメとヒコボシのロマンティックがどうとかと熱弁奮うウィンリィの会話はまるで交わらないまま彼の間の良さと彼女の勘違いでなんとなく丸く収まっていった。

ふと思いついて、傍にやってきて瞳を輝かせるウィンリィに手を伸ばし。

「な、なによ」
「べっつに、なんでもねえよ」
赤く色づいた頬の温度を生身の手の甲で確かめ、そのまま金髪の頭をなでなでしてやると、ウィンリィは訳分かんないと言いながら顔緩む嬉しさを必死に噛み殺しているようだった。

ああ好きだなあと思った瞬間というのは、訳の分からない行動に出るもんだなとエドは思いつつ、細い腰を引き寄せ甘い吐息が漏れ出すまでさほど時間は要さなかった。





fin.










>七夕にBBSで一日限定で公開していたものです。