・キララク学園編(一話完結・続編なし←書く気が起きなかったから) 「きょ、今日こそ、憧れのラクス先輩に話しかけるんだ…!」 学ランを身にまとい、初々しさを炸裂させる少年、13歳キラ・ヤマトは顔だけは凛としようと 引き締めたが、何分少女にもまごう可愛らしさなので、ただちょっと女の子が気張りました! くらいにしか傍目からはうかがえない。 学年が一つ上のラクス・クラインという女生徒は、学園内のアイドルどころか、ですてぃにー王国のトップアイドルである。その名を知らぬものはおらず、彼女の歌を聞いたものは大概が美声と歴代でも屈指の魔性の魔力を秘めた微笑みに、骨抜きにされてしまうという噂だ。 歌姫だが、歌自体が魔法行使となるため、危険な上、彼女自身鬱陶しいとの理由で滅多に披露されない。 「でも、どんな歌なんだろう…聞いてみたいなあ」 彼女の舞台での演説しか耳にしたことはないが、澄んでいて、ここでキラはハートを射抜かれて しまったらしい。容姿も勿論、魔女でも歴代屈指の美貌を誇ると聞くが、その歴代の顔を 全く知らないのでキラはすごいなーともいえない。 ただ、傾国の魔女という形容が似つかわしい女の子だということは分かる。 「ふふふ……では、聞いてみますか?」 「そ、その声は!!」 キラは新喜劇並みの挙動で振り返り、目が飛び出しそうなほど見開いた。 「こんにちはーみんなの憧れ、ラクス・クラインですわぁー」 (じ、自分で言ってる!なんて素敵なんだ!!) キラはきゅんとして、♥をドキドキピンク色に変色させた。 「ふふ、心臓はピンク色に思われがちだけれど、血管が走ったりしてるから、 本当はもっとグロい色ですわよ」 (きゅん!) <キラの鼓動は通常の3倍で失踪しています> 「誤字ですわよ」 「ラ、ララララクスさん!おはようございます!」 「今昼ですわ」 「ええ!そんなはずわ……ってええ!?僕朝の9時からここでラヴレター持って、 壁の影からスタンバってたのにもう昼の12時!?ありえねー!!っつか授業は!?」 「くすくす。避難訓練でみんな運動場に今頃大集合していますわ」 「も、もしかして地震の…!?そんな、僕のクラスの避難完了タイムは…!」 キラは顔面蒼白になり、がたがたと震え始めた。 「ふふ、おそらく全クラスでビリですわね」 「ええーーー!!そんなーー委員長ごめ………あ、でもアスランか。まあいいや」 「アスラン?アスランをご存知ですの?」 一転、しおらしく長すぎて目に入りそうなまつげをバシバシとしばたかせるラクス。 「う、あ。はい…」 そういえば、今更気がついたがラクスとの距離があまりにもないのだ。 身長は同じくらいなのだが、実は息がかかりそうな距離でしゃべり続けていたので 思わず、どっきりレモン味の事態が起こってもありきたりな少女漫画では全く不思議はないのだ! (こ、このギャグ展開なら、モルゲンレーテにだっていけるかもしれない…!) 昨日ケーブルテレビの一挙放送でみた「ガンダムSEED」を思い出しながら、 青少年らしく色んな『想像の翼を羽ばたかせた』(田中芳樹多様表現)キラは、どうやって どっきり★演出をしてやろうか…と、徐々に彼の前世である、 仇名はゴット・スピード、本名は超自由という魔王の片鱗を覗かせるあくどい面で妄想を始めた ところで、ラクスは目を♥にして薔薇を傍迷惑に空間中に自分で振り撒いて言った。 「アスラン・ザラは、私が将来結婚する方ですわ!」 「しぇーーーーー!!!」 ★おわり★ ・メイリンとラクス 「ラクスさ…」 「だめです!」 メイリンが、あっとした表情で口に手を当てた。 一体これで何度目だというのだろうか、ラクス『様』と呼んでしまいそうになるのは。 「すみません…」 「いえ…でも、なかなか慣れませんのね皆さんやっぱり」 苦笑いして、ラクスは少しだけ悲しそう。 メイリンはそれに気づくとなんとか取り成そうと抗弁を早口で繰り出した。 「ごめんなさい私ラクスさまはずっとアイドルで、こんな身近にいるだなんて今でも 信じられないんです、だってラクスさまは英雄でアイドルでシーゲル議長の子供で、 綺麗で格好よくてTVの向こうの人だって記憶が長すぎて、でも実は結構おしゃべりできて 可愛らしくて親しみが持ててちょっと、いえかなりズレてるけど全然普通な方だって 分かってるんですけど…!!」 「………メイリンさん……」 まくし立てるメイリンに呆然とするラクス。 われに返り、恥ずかしいのと本音を口走っていた口を噤んで、あうあと言葉にならぬ 意味不明なうめきを残して顔を青くして沈黙してしまう。 「あ、あの…すみません…失礼なことばか」 「メイリンさーん!!!」 「へあっ」 叫ぶなりラクスは小柄な彼女に抱きつくと、惜しげもない満面の笑顔をメイリンに向けた。 「大好きですメイリンさん!」 「え?」 ほうけるメイリン。というか、ラクスからは優しい、いい匂いがしてほろ酔い気分になった。 「私……ここまで仲良くなれた方って、カガリさん以外では初めてなんです」 顔を高潮させて、ラクスは言った。 「ここ二年で尚更みんな遠慮されて、なかなかお友達ができなくて…だから、とっても嬉しい」 「ラクスさま」 「ごめんなさいメイリンさん。呼び方なんて気にしてしまって…いいんです、私は、 メイリンさんとお友達になりたいんであって、呼び方でお友達になりたいのではなかったんですから」 「ラクスさま…!!!はい、私も、お友達になりたいです!」 「本当にですか!?」 「はい!喜んで!!」 きゃーっと笑いあうと、再度抱き合って仲睦まじい二人。 そして、微笑ましい友情を影から見守る人影二つ。 「仲、いいね…」 キラは無表情で呟いた。呆れるアスラン。 「なんでそんなに嬉しそうじゃないんだ」 「友達になるのは別にいいんだけど、ラクスって気に入った人にはすぐ『好き』とかいうから…」 「いいじゃないか、素直で」 「まあね、でもあんまり……」 「嬉しくないのか?」 それくらいいいだろうとアスランは思う。女同士だし、過敏になる必要はないだろう。 そうなだめると、キラは憮然とし、胸を張っていった。 「僕以外に言われるのは気に食わないよ!」 …こいつこんなにバカだっけ。 アスランは嘆息した。 |