Re:birthday_3.9 番外編『キラのふわふわなある一日』 キラは最近、気分が良かった。
あとは、このデータをオーブに送って、ラクスの部屋に寄ろう。 昼時だし、一旦会議室から帰ってきてるかも。 オーブ軍服に身を包み、ターミナル本部廊下を端末抱えて歩く姿は、普段ならば軍人らしく見えるのかもしれないが、現在は気分がるんるんしている為、青年が想い人に告白してOK返事をもらったばかり、というような浮かれぶりで軍人というか、やや童顔である顔が余計に緩んでいるお陰で、中学生のようであった。 第二次大戦は旧クライン派代表、ラクス・クラインの提案により一先ず停戦となった。今はまだ休戦協定はオーブ・プラント間で締結されていないが、旧クライン派が介在役となり水面下で着々と双方代表者自らが席に着き、会見が幾度となく開催されている。宇宙からの戦力引き上げをオーブから打診し、また実行に移すことでプラントにもこちらが敵愾心を持っていないことを示した結果、臨時評議会委員代表も、やや軟化し、プラントとの信頼関係も上層部では徐々に回復の兆しを見せていた。 そう遠くないうちに、おそらくは休戦協定締結も実現されるだろう。 「最近はいいことが続くなあ…」 キラはカガリ達オーブ幹部と共に、宇宙へと渡航してきていた。一応はオーブに正式入隊し、それなりの階位も与えられている彼は、おいそれと宇宙を「ラクスが心配だから」などという理由で闊歩しているわけにはいかず、停戦後はオーブにしばらく戻り、オーブ復興に技術面やMSでの撤去作業等に手を貸していたのだが、どうにも落ち着かず、うろうろしているのを見かねたカガリが、 「ラクス達を介在人にして、会見をやるんだ。護衛も、会議での裏方技術サポートも欲しい。何より今のところは極秘裏に勧めていることだから、なるべく当事者主導で全体をまかないたい。宇宙に、ついてきてくれないか?」 と声をかけたのだ。 カガリとしては「ついてきてくれないか」というより、「つれていってやるよ」くらいの心持であったのやもしれないが、比重としては実際問題困っていたので、キラに心から支援を要請した形である。 首長たるカガリが軍総帥に位置づく以上は、キラは部下であるから要請などせずとも命令を出せば事済むことであったが、非常時にカガリの代行としてキラを入軍させたのであり、キラは命令される立場にないと考えていた。 キラとしては、とりあえずオーブ軍人であるため、命令とあらばカガリを信じ、手助けできるよういつでも動くつもりであったが、今回に関しては命令でなくても、飛びついていただろう。 ラクスには、大体半年くらいロクに会ってなかったし。 いや、会うには会っていたのだが、ラクスはプラントから訪問を希望されることが多く、またターミナル代表でもある彼女は処理に追われ、あちこちに飛び回らねばならなかったのである。旧クライン派が停戦を提案し、両国に承諾されたとはいえ、万人から信頼を取得した訳ではない。 彼女曰く、「客寄せパンダは、それなりに理由があるからこそただのパンダではないのです」とのこと。 でもパンダよりかはラクスの方が可愛いと、キラは思っている。 レッサーパンダの方があってるかな?何かふわふわしてて、目もまん丸く愛らしいところなんて。色がサファイアではないのが残念だけど。 fin. |